2012/10/13

夢の一匹

日の入りまで時間があったので自宅前の烏川で初めて囮を泳がせた。
自宅前ということで、烏川は魚を釣ったり、探検したり、散歩したりと思い出がいっぱいある川。高校生になるとあまり行かなくなっていたが、大学時代や、東京勤めの帰郷時にたまに川を見に行っては、たまらなく懐かしい思いがしたのを覚えている。そんな烏川だが、自宅があるあたりでは鮎の数も少なく、友釣りをする人は皆無であり、子供ながらに友釣りは別格の釣りという憧れを抱いていた。いつか目の前の川で友釣りで鮎を釣りたいと密かな夢を持っていた。

そんな思いから囮を泳がせただけで感傷的になっていた矢先、大きな当たりと共に目印が下流へ飛んだ。いきなり夢が目の前に現れたため心臓が飛び出るくらいの緊張が走る。バレるなと何度もひとりごとをつぶやき、タモに収めた。そして誰も居ない川原で一人放心状態になりながら何度も鮎を眺めた。夢に見た鮎、興奮で手が震えていた。

夢が叶った日、釣りというものを再確認した日。鮎シーズンはあっという間に去ったが、一生色あせない思い出を貰った夏だった。